ジョージ・ミラー監督作品「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のスピンオフである今作。
結論から言えば、9年ぶりの新作は非常に楽しめました。 ただ、個人的には最高潮のテンションで常にヒャッハーしていた前作と違って、今作は静けさと悲しみの割合が多いと感じました。
・実はコメディ映画?
全体としてエモーショナルな雰囲気が漂っているとはいえども、前作より相当に笑いの要素が含まれていました。 メインの悪役であるクリス・ヘムズワース演じるディメンタスがその筆頭で、イモータン・ジョーほどのカリスマ性はないものの、そのふざけ具合と恐ろしさのギャップがたまらないいいキャラに仕上がっているのです。 それも、「マイティ・ソー バトルロイヤル」以降のすっかりコメディリリーフとなったソーにそっくりであり、マーベル映画を通ってきた方にはおなじみのクリス・ヘムズワースが見られることでしょう。 「マッドマックス」シリーズは悪役ほどよくしゃべりますな。
・マックスそっくり
イモータン・ジョー軍には、ジャックというキャラクターが登場します。無骨で口数は少ないけど、強く、頼りになる男で、劇中ではフュリオサと信頼関係を築いていきます。 …そうです、何を隠そうこの男、マックスにそっくりなのです。 まぁマックスよりは喋る方だと思いますが、見た目といい性格といいかなり似ている部分が多いのです。 多くを語らず、たまに口を開けば含蓄のあることを言うタフガイ。マックスそっくり。 この作品は時系列的に、「怒りのデス・ロード」よりも前の話なため、ジャックとの出会いがあったからこそフュリオサはマックスのことを信用するに至ったのかもしれません。
・マッド・マックスの世界の拡張
今作を観て感じたのは、スピンオフ作品として素晴らしい出来だということです。 「怒りのデス・ロード」における世界観をさらに深掘りし、要素が散りばめられた「フュリオサ」を観た後に前作を観ると段違いに味わい深くなること間違い無いでしょう。
あまり描かれることのなかったフュリオサの過去を丁寧に描き、幻の「緑の地」も描写されるため、「怒りのデス・ロード」におけるフュリオサに対する見方が変えられるような内容です。
イモータン・ジョーをはじめ、ジメっとした変態性を露わにしていた人喰い男爵、少しだけかませ犬感のあった武器将軍、そしてみんな大好きリクタスなど、お馴染みの顔ぶれも勢揃いしています。
前作だと印象的ながらちょろっとしか出てこなかったキャラたちのドタバタ劇を楽しく観ることができます。主にコメディ的描写が多いので。
今回印象的だった、賢者と呼ばれる人間百科事典のような老人は、マッドマックスにおいてはイモータン・ジョーの子どもたちの乳母?のような女性として登場していた気がします。 なぜなら、彼女も全身にびっしりとタトゥーで文字が刻み込まれていたためです。 まぁ賢者はディメンタスの配下に置かれており、訊かれた概念について辞書のように精緻な表現で説明する役だったので、イモータン軍でも乳母兼教育係的な役割を担っていたのかもしれません。 映画の初めの方でV8エンジンについて滔々と語る賢者は、短時間でキャラクター性と世界観の説明をするかなり良いシーンだったと思います。 荒くれ者たちが真面目に説明を聞く姿は、正直シュールで笑えるシーンではありましたが。
まとめ
映画としての出来も素晴らしく、スピンオフ作品としても文句なしの今作ですが、一箇所難点を挙げるとするなら、やはり「怒りのデス・ロード」よりもテンション感は抑え気味だという点です。 とにかく緩やかな緊張感とアドレナリンMAXの波が連続していた前作よりもフュリオサの感情の動きにフォーカスしたシーンが多い分、ウォーボーイズの「俺を見ろーっ!!!」や、V8コールも控えめなため、それらを期待していた人からすれば少しだけ肩透かしな部分はあるかもしれません。 だけど面白い!! 自分は4DXで鑑賞しましたが、局所的な熱量は前作に劣っておらず、座席がグイングイン動くのなんの。 冗談抜きで30回以上は座り直しましたし、動きが激しすぎたのか、座席のブロックを区切るロープが外れてしまうほど揺さぶられていたようでした。 やはり4DXはドライブの時間が長い映画がベストですね。
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